YMO Wikia
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BGM(びーじーえむ)は、イエロー・マジック・オーケストラ(YMO)の5作目のアルバム。1981年3月21日アルファレコードからリリースされた。

解説

初期のヒット曲の並ぶ、派手なイメージのアルバム『ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー』などに比較すると、収録曲全体がおとなしく暗めのイメージを持つため、爆発的セールスこそなかったが、リーダーの細野晴臣自ら「たくさん売れた後だからこそやりたいことができたアルバム」と言わしめた問題作品。

YMO結成当初は覆面バンドとして進めたかったが、前作であまりにも売れすぎ、世間からは個人のキャラクターをさらに求めた。そのため、このアルバム以降、個人の顔と音楽性を前面に出すこととなった。

高橋幸宏によるドラムパートに加え、アナログリズムマシン(TR-808)の持つドライな質感と、非常にエフェクティヴな空間処理が目立ち、それらがアルバム全体の印象を特徴づけている。

10曲中、8曲が4分30秒、及び、2曲が5分20秒と演奏時間が統一された作曲方法や、意味深な歌詞のメッセージ性もファンの話題となった。

ジャケットデザインは奥村靫正である。

アルバムのタイトルは細野が決めた。これは「YMOの曲はまるでBGMのような曲だ」と批評した音楽評論家への意趣返しの意図があったという。また、冗談で「Beautiful Grotesque Music」の略とコメントしたこともある。

坂本が心身ともに不調であることと細野の進め方に対する反発からレコーディング日にスタジオに行かないなど、意識的にサボることがあったことを後日語っている。

細野がYMOのベストと思われるアルバムに、古くならない音と歌詞の内容の良さから『BGM』を挙げている。

このアルバムのために制作費500万円でテレビCMが作成された。細野が老人、高橋が警察官、坂本が看護師の姿で、ニュース・キャスターとしてスネークマンショー伊武雅刀が出演している。放送当時、音楽アルバムのためにテレビCMが作成されることは非常に珍しいことであった。

レコーディング

  • レコーディング開始は1981年1月15日。リリースが同年3月21日なので非常に短期間かつギリギリまで録音されたため、歌詞が印刷に間に合わなかった(初めて歌詞が明らかになったのは写真集「OMIYAGE」にて)。
  • このアルバムにはミックスダウンは1曲1時間半というルールがあった。
  • シーケンサーがMC-8からMC-4に変更された
  • シンセサイザはプロフェット5が主役となった。坂本龍一はプロフェット5が秘めている可能性を探るべく、相当使いこなした。
  • レコーディングではTR-808で延々とループを回し、それを聞きながらの作業を行っていたという。
  • 生楽器がほとんど使われていないのもこのアルバムの特色である。

デジタルMTR

  • レコーディングには当時開発されたばかりで日本に2台しかなかった3Mのデジタルマルチトラックレコーダーが使用された。しかし、あまりにもクリアな音に細野が納得せず、一旦リズムパートをティアックのアナログMTRに録音し、それをデジタルMTRにコピーするという特殊な録音方法が取られている。これは民生用MTRの狭いダイナミックレンジにより音量のピークで音色が変わるとともに全体の音圧が上がる、のちに”テープコンプ”と名づけられる手法であるが、それを意識的に取り入れた最初期のレコーディングとされている。
  • しかし坂本は、当時の自分は立派なアルファレコードのスタジオでまるで貧乏アーティストがやるような方法には気乗りしなかったと回想している。
  • デジタルMTRではテープを切って編集することができなかったため、当時のエンジニアに不評であった。
  • チャンネル数がアナログMTRでは24、デジタルMTRでは32と一見増えているようではあるが、アナログで2チャンネルをミックスして1チャンネルにするということがデジタルMTRではできなかったため、実質的に利用できるチャンネル数が減るというデメリットもあった。

歌詞

  • 前作まで歌詞はクリス・モスデルによるものであったが、このアルバムからは各メンバーが作詞するようになった。
  • ピーター・バラカンが翻訳(なお、発音指導もバラカンが担当し、3人共かなりしごかれたと回想している)するようになり、YMO散開(解散)まで協力することとなる。
  • 歌詞を英語にしたのは、日本語だと内容がストレートすぎるため、英語でワンクッション置きたかったためである。

曲目

  1. BALLET/バレエ
    (作詞:高橋幸宏、ピーター・バラカン / 作曲:高橋幸宏)
    このアルバムの方向性を示した曲で、暗い中にも甘い雰囲気を醸し出している。イントロのピアノは坂本による演奏。歌詞はタラマ・ド・レンピッカ(Tamara de Lempicka アール・デコ期の女流画家)について霧の中にあるワルシャワの雰囲気を高橋が表現。SE的な音色は細野による機関車をイメージしたもの。フランス語のヴォイスは布井智子。矢野顕子はYMOの中で一番お気に入りの曲としてこの曲を挙げている。
  2. MUSIC PLANS/音楽の計画
    (作詞:坂本龍一、ピーター・バラカン / 作曲:坂本龍一)
    ヴォーカルは坂本。このアルバム時にややスランプだった坂本の苛立ちをぶつけるような激しい詞が特徴。一箇所「パチッ」というノイズが聞こえるが、これはデジタルレコーダーのデータエラーに起因するジッターノイズである。
  3. RAP PHENOMENA/ラップ現象
    (作詞:細野晴臣、ピーター・バラカン / 作曲:細野晴臣)
    ぼそぼそと「ラップ現象」についてラップ風に語りつづける、というちょっとした洒落をきかせている。歌っているのは細野だが、彼は自分の声が気に入らないらしく、特徴的な声の低音部分を完全にカットしている。間奏のヴォイスの反復はサンプリングではなく、テープ・ループを使用している(デジタル・ディレイのホールドモードを使用したとの説もある)。
  4. HAPPY END/ハッピー・エンド
    (作曲:坂本龍一)
    坂本のソロシングル「フロントライン」のB面に収められていた曲をダブミックス。ただしメロディーが省略され、ダブ的に破壊する手法を大胆に取り入れたため、一聴するとわけがわからない。1981年のウインターライブでは原曲に近いアレンジで演奏している。2005年9月28日に発売の坂本のアルバム『/05』にはピアノ4重奏で収録。
  5. 1000 KNIVES/千のナイフ
    (作曲:坂本龍一)
    坂本のファーストアルバム『千のナイフ』の収録曲をセルフカヴァー。締め切りに曲が間に合わなかったために、急遽収録されたらしい。YMOのコンサートでも頻繁に演奏されていたが、このテイクでは、より乾いた感じのアレンジとなっている。曲の最後で片方のチャンネルだけ「ビヨョョョ~」と鳴っているのはエンジニアの松武秀樹がプログラミングを誤ったため。しかし坂本が「こっちの方がかっこいい」とそのまま採用された。間奏はギター・ソロの雰囲気をキーボードで実現しており、坂本自身が気に入っている。高音から低音に落ちてくる部分はプロフェット5のポリモード→モノモード切替を使って実現している。
  6. CUE/キュー
    (作詞:高橋幸宏、細野晴臣、ピーター・バラカン / 作曲:高橋幸宏、細野晴臣)
    のちにシングルカットされた。詳細は「キュー (YMO)」を参照。
  7. U・T/ユーティー
    (作曲:YMO)
    シングル『キュー』のB面にも収録されている。詳細は「キュー (YMO)」を参照。
  8. CAMOUFLAGE/カムフラージュ
    (作詞:高橋幸宏、ピーター・バラカン / 作曲:高橋幸宏)
    シングル『マス』のB面にも収録されている。詳細は「マス (YMO)」を参照。
  9. MASS/マス
    (作詞:細野晴臣、ピーター・バラカン / 作曲:細野晴臣)
    のちにシングルカットされた。詳細は「マス (YMO)」を参照。
  10. LOOM/来たるべきもの
    (作曲:YMO、松武秀樹
    無限音階は松武秀樹がE-muのモジュラーシステム(通称タンス。moogIII-Cをタンスということも多いが、本来はこちらをさす)を使って実現。上昇音と下降音が同時に響いている。上下6オクターブずつを時間的にずらし、延々音が上昇して聞こえるような耳の錯覚を利用している。松武のソロシングル「謎の無限音階」でも使用されていたものではあるが、松武がスタジオで無限音階を流していたところをYMOメンバーが聞いて採用された。後半の人間の呼吸に合わせて音が左右に飛んだり、大きくなったり小さくなったりする部分も松武のアイディアによるもの。水滴の垂れる音はメンバー3人の脈拍の平均値を割り出して作られた。

参加ミュージシャン

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