ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー(Solid State Survivor)は、イエロー・マジック・オーケストラの2作目のアルバム。または同アルバムに収録されている曲。アルバムには同バンドの代表曲である「Rydeen(ライディーン)」が収録されている。
解説[]
細野晴臣のソロ・アルバム色の強かったファースト・アルバム『イエロー・マジック・オーケストラ』に比べ、本作は高橋幸宏・坂本龍一の曲が中心となっている(細野作曲は全8曲のうち2曲のみである)。また、フュージョンの要素が一掃され、ディスコ、ニュー・ウェイヴ色が強くなっているのも特徴である。
当初、アルバムタイトルは「メタマー」(「突然変異」を意味する「Metamorphose」の造語)と付けられていた。
YMOの全作品の中でもポップで明るい曲調が多いこの作品は、まさにYMOを代表するアルバムである。そのわかりやすい内容から日本において小・中学生を含めた一般のリスナーに熱狂的に受け入れられた。本作のリリース後ワールド・ツアーに出ていたYMOは、ツアー先で日本国内での本作のヒットの報を聞き、大変驚愕したと後に語っている。本作は結果的にミリオンセラーを記録し、翌1980年の日本レコード大賞アルバム賞を受賞。日本でのいわゆるテクノ・ポップ全盛時代をつくり上げ、その後の「YMOチルドレン」と呼ばれる日本のミュージシャンたちが最初にテクノ・ポップに触れたきっかけをつくったという点で、非常に重要なアルバムと言えよう。
収められている楽曲も、前述の「Rydeen」や「Technopolis」はYMOを代表するものであり、「Behind The Mask」は後にマイケル・ジャクソンやエリック・クラプトンらがカヴァーするなど海外で高く評価された。
A面(1〜4曲目)は最後の「Castalia」を除いて、ダンス・ミュージックを意識し楽曲がつないであるが、B面(5〜8曲目)はロックやニュー・ウェイヴの影響が色濃く出ている。このアルバムの発売当時、YMOはニュー・ウェイヴに傾倒しており、市場戦略的に行なったフュージョン、ディスコなどの米国音楽へのアプローチから、徐々にメンバーの興味を起こさせる英国・欧州の音楽志向に移行していった過渡期のアルバムと言えるかもしれない。DEVOによるローリングストーンズのサティスファクションのカヴァーに影響された、ビートルズのカヴァー「Day Tripper」(ぎくしゃくとしたニュー・ウェイヴ的アレンジである。高橋の要望とされる説があるが、後に高橋は、「僕が要望するならジョージの曲をやる」と語っている)や、パンク的要素を取り入れた「Solid State Survivor」(メンバーは「デジタル・パンク」と呼んでいた)などにその一片が見受けられる。
収録曲のうち、「Behind The Mask」と「Day Tripper」はアルバム制作以前のライブでも演奏されていた。
ワールド・ワイド版[]
本アルバムも1stアルバム「イエロー・マジック・オーケストラ」同様にワールド・ワイド版(US版)を制作する計画があった。その計画は、
- ミドル・テンポの「キャスタリア」「インソムニア」を「ナイス・エイジ」「シチズンズ・オブ・サイエンス」に差し替える
- ジャケットをわかりやすい東洋趣味のイラストに差し替える
というものであった。そして、後にライディーンのシングルに使われることになるイラストをミック・ハガティ氏が制作し、告知も行われ、テストプレスまで行われた。しかし、この計画は頓挫し、その後この計画はアメリカ編集アルバム「マルティプライズ」として仕切り直されていくこととなる。
収録曲[]
- Technopolis (テクノポリス)
作曲:坂本龍一- 「Rydeen」と並ぶYMOの代表曲で、のちにシングルカットされた。詳細は「テクノポリス (YMO)」を参照。
- Absolute Ego Dance (アブソリュート・エゴ・ダンス)
作曲:細野晴臣- 沖縄音楽とインド歌謡とディスコの要素を取り入れた、細野の個性が強い作品。前作の色が濃い唯一の楽曲。リズムの跳ね方は当時細野と坂本がはまっていた。ヴォーカル(というよりむしろ合いの手)としてサンディーが参加。
- Rydeen (雷電/ライディーン)
作曲:高橋ユキヒロ- YMOの代表曲でもあり、のちにシングルカットもされた。詳細は「ライディーン (YMO)」を参照。2007年にはキリンラガービールのCMだけのためにYMOが再結成され、この曲をアレンジした「RYDEEN 79/07」がリリースされた。
- Castalia (キャスタリア)
作曲:坂本龍一- 速いテンポの曲が続いた後に静かに流れる、坂本のピアノを主体とした曲である。重く、暗い印象のこの曲はアルバムの中でも異色の存在感を放つ。映画『惑星ソラリス』からインスパイアされたと言われているが、直接的には武満徹の音楽から影響を受けている(矢野顕子に向けて書いた曲とも発言している)。初期YMOのライヴでは1曲目に演奏されることが多く、DVD「Visual YMO」やアルバム『ONE MORE YMO』にも収録されている。
- Behind The Mask (ビハインド・ザ・マスク)
作詞:クリス・モスデル/作曲:坂本龍一(・高橋ユキヒロ)- 詳細は「ビハインド・ザ・マスク (曲)」を参照。
- Day Tripper (デイ・トリッパー)
作詞・作曲:ジョン・レノン/ポール・マッカートニー- ビートルズ中期のナンバーのカヴァー。ギターで鮎川誠が参加。幾何学的で難解なアレンジが施されているが、これは当時ローリング・ストーンズの「Satisfaction」をカヴァーしたディーヴォに強く影響を受けている。高橋によると、カバー元はビートルズのオリジナルではなく、かまやつひろしのカヴァーであると発言している(ここで言及されたかまやつのカヴァーはザ・スパイダース時代からのアレンジのものと推測され、スパイダースはオーティス・レディングのアレンジを元にしており、いわば孫カヴァーといえる)。「She was a~」で始まるのはそのためとも付け加えている。ヴォーカルは高橋のオクターブ・ユニゾンで歌った裏声をハーモナイザで機械的に加工している。高橋は気持ち悪がったが、細野が気に入っている。録音当時の鮎川は4/4拍子から5/4拍子に変わる部分で戸惑ったが、涼しい顔を作って懸命に演奏を続けたらしい。YMOのワールド・ツアーではかなり盛り上がる曲であった。
- Insomnia (インソムニア)
作詞:クリス・モスデル/作曲:細野晴臣- タイトルどおり、当時実際に不眠症だった細野の曲。ヴォーカルは細野。間奏の最後に出てくる無限音階は細野が気に入っており、アルバム『BGM』収録の「LOOM(来るべきもの)」と同じ方法で実現されている。
- Solid State Survivor(ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー)
作詞:クリス・モスデル/作曲:高橋ユキヒロ- 軽快な8ビートの曲であり、メンバーたちは「デジタル・パンク」と呼んでいた。曲中で流れる咳き込んだような音は実際にこのアルバムのマネージメントを行っていた生田朗の咳き込んだ声を、ヘッドフォンをマイク代わりにして拾って加工したもの。ベースラインは坂本によるもの。シングル『TECHNOPOLIS』のB面にも収録されている。
参加ミュージシャン[]
- イエロー・マジック・オーケストラ
- 松武秀樹 - コンピューター・プログラミング
- 鮎川誠 - エレクトリック・ギター(「デイ・トリッパー」、「ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー」)
- サンディー - ヴォイス(「アブソリュート・エゴ・ダンス」)
- 生田朗/ヴォイス(「ソリッド~」:本業は当時のマネージャー。クレジットなし)
参考[]
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